「失敗の科学」 マシュー・サイド

「失敗の科学」を読んだ。
認知的不協和について書いあった。認知的不協和とは、フェスティンガーが提唱した概念で自分の信念と事実が矛盾している状態を指す(矛盾した認知が共存する状態)。この状態では人は苦痛を感じる。この時、苦痛から逃れるために、自分の信念が間違っていたと認める事ができれば簡単である。しかしそれまでのコストが高い場合には自分の信念が間違っていたと認めることに大変な苦痛を感じる。そこで事実の解釈を変えてそれを信じることによって苦痛から逃れようとする。自分が間違っていてもそれを認めることができないのはその人が未熟なせいではなく、人間の心理として自然の反応だったのである。相場での損切りができない心理も、認知的不協和で説明できる。自分が間違っていたことを認めたくないために、相場が間違っていると言い聞かせ、損切りを躊躇するのである。

「マージナル・ゲイン」というのは、小さい改善を積み重ねて大きな目標にたどり着くという方法である。
「リーン・スタートアップ」という概念も勉強になった。見切り発車して試行錯誤を繰り返すほうが、万全の体制でスタートするより、速く効率が良い。失敗を恐れず行動することが重要だ。

フィードバックを得るために、失敗を失敗と捉える仕組みが必要となる。失敗を認識できないならそもそも修正が不可能だからである。失敗か成功かを判別することは実は難しい。直感的に成功に見えても、実は失敗というケースがあるからだ。「認知的不協和」の問題もある。因果関係と相関関係を区別することも難しい。バイアスを取り除くために「ランダム化比較試験」を行う必要がある。これにより行った施策が本当に効果的であったかどうかを検証することができる。

犯人探しで問題を解決しようという考え方も問題である。本当はミスを犯した人間に問題があるのではなく、ミスを犯した過程にある。しかし犯人を見つけて責任を取らせると問題を解決したような気になってしまうし、この方が簡単である。結果、根本的な原因を見つけることができず、フィードバックも得られず、学ぶことができない。

得るところの多い本であった。面白かった。

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